前々からやりたかったラーメン発見伝の全話レビュー。
飽きたら止めますが、止めないようにがんばる。


※かなり平気でネタバレ書いてますので、
一通り読んだ人用。
ご注意を。


1.ラーメン会社員、現る!!

FullSizeRender
自信満々な藤本クンであるが、芹沢サンに幾度も煮湯を飲まされるのはまた別の話

記念すべき第1話。
ネットを見ていると「ラーメンハゲが出てこない時はつまらない」とか言われがちな可哀想なラーメン発見伝。
僕は基本的にこの漫画はグルメ漫画のマスターピースだと思っていて、
ハゲが出ようが出なかろうが最高!と思ってはいるが、とは言えやはり第一話が故か、どうもまだ本調子ではない気はしたり。

この1話にしか登場しない大島課長。
実は最終巻にちょっと出てきて、ある意味この漫画の立役者だったことが明かされる(と言うのはちょっと言い過ぎかもしれないが)。

1話の後半で藤本クンが語る「制約があってもベストを尽くそうとしている店はいっぱいありますよ。」はシリーズに通底するスタンスは気がする。
そういう意味では、第1話からブレない。


2.泣く子も黙る、大魔神!?


有栖川さんと小池さんの初登場回。
この2人はラーメン発見伝でも超重要人物である為、2話にしてなかなか重要な回といえる。
特に有栖川さんは、ラーメン発見伝以降の作品も準レギュラーとして存在感を示すので、是非初見の方は押さえておきたいところ。

尚、有栖さんは美味いラーメンを食べるとニッコリ「大仏顔」に、不味いラーメンを食べると怒りに満ちた「大魔神顔」になると言う設定があるが、ラーメン発見伝に於いては「大魔神顔」になるのはこの回を含めてたったの二回のみである。
この後もたまに大魔神化することはあるが、基本的にはラーメンが不味いからというよりかは、作り手に道義上の問題がある時のみである。

また小池さんについて。
この回ではかなり頼りない感じが強く、以後もたまにその気弱な性格から問題が発生する回はあるものの、
「自分のラーメンの味に自信がない」というのはこの回のみで、この後の小池さんは少なくなもラーメンの味に関しては、作中屈指の頼れる兄貴的な存在となり、あまり語られることはないが、ラーメンハゲと並ぶ藤本クンの師匠的な存在のひとりとも言える(藤本クンが教えることも多いけど)。

FullSizeRender
個人的に有栖さんは大好きなキャラ。続編の才遊記、再遊記でも頻繁に登場する

3.ラーメン小学生vs藤本!?


これまた準レギュラーとして、この後も度々登場する祐介の登場回。
祐介は作者サイドからしても、若干使いにくいキャラなんじゃないかと一読者としては思うのだが、
のちに登場する花輪亭というラーメン屋の登場により、そのラーメン屋を主軸とした活躍を見せる。
話としては可もなく不可もなくという感じ。

FullSizeRender
味に非常にうるさいキャラ設定であるが、そこまで活躍しないのが惜しい


4.課長の宿題、無理難題!?(前編)


一巻は当たり前かもしれないけど、こうやって真面目にレビューをすると後々までレギュラーとして登場する人物が沢山出てくるなに気づく。
この回ではおそらく芹沢達也と並ぶ、シリーズ屈指の切れ物「四谷課長」登場回。
個人的にはパトレイバーの後藤隊長と並ぶ理想的な上司のひとりだと思っていて、非常に好きなキャラ。
今回はかなり破天荒な雰囲気を醸しているが、この回以降はかなり落ち着いている。


ラーメン漫画ながら、早速蕎麦と醤油を題材にした話であり、
早くもラーメン一辺倒なだけでないことをアピール出来ている。

ちなみに今回、藤本クンと赤倉社長の喧嘩の際に交わされる「蕎麦だって昔はファストフードだったのに、高級化しただけ。ラーメンを下に見るのはおかしい」と言う議論は、ラーメン発見伝シリーズがその後も描き続ける「ラーメンの今の形」という部分と度々重なる重要な指摘であるし、
実際、これから後も度々出てくる議論のひとつである。

FullSizeRender
後藤隊長か四谷課長、漫画界の良上司。

5. 課長の宿題、無理難題!?(後編)


ほぼ書きたいことは前編で書いたので、特に書くことはない。
正直、切れ物としての四谷課長の良さはあまり描かれていないように感じるので、ストーリーとしはイマイチだと思う。


6.職人芸とラーメン魂


藤本クンが昔通ってたラーメン屋のオヤジさんが老年から昔のような名人芸が出来なくなり……と言う物語。
今やラーメン専門店が、外食ラーメン市場の中核を担っている訳だが、
まだこの頃は街の中華屋がラーメンを提供するメインの場となっていた時代の香りが残る。
街の小さな中華屋の課題として挙げられるのが「店主の老齢による後継問題や、技術力の低下」など。

私自身ラーメンが好きでよく食べるが、
街の中華料理屋で食べることは皆無で、ラーメンと時代性の結びつきを強く感じさせる話のひとつだと言える。
作品も後半に行くほど「街の中華屋」の話は少なくなるが、まだこの辺りはこう言った話も多く取り扱われる。
物語の解決法が、力技ではなく、非常に現実的なのもラーメン発見伝らしい。

FullSizeRender
二度と出てこなさそうなこの方、後の巻にて2回登場する


7.繁盛店のしくみ(前編)


遂にネットで大人気ラーメンハゲこと「芹沢達也」の登場回。
後ろになればなるほど皴がなくなりつるりとした顔になっていくが、この頃はまだ42歳相当な老け感。
かく言う私もたまたまネットでこの回を読んでしまった為、ここまでラーメン発見伝大好き人間になってしまった口なので、やはりこの回の引きは強い。


芹沢達也という男の存在があればこそ、この作品は「美味しんぼ」の様な「味が良い方が勝つ」という従来グルメ漫画の枠組みを超えた、ビジネス的な視点を得た。
僕はラーメン発見伝に於いて、芹沢達也のみがあまりに評価がされすぎていると思ってはいるが、
とは言え、やはり彼なくしてこのものがたりはやはりあり得なかったのも事実である。

FullSizeRender
あの名言頂きました!!


8.繁盛店のしくみ(後編)


さて、一巻も遂にこれで終わりである。
実はこの芹沢達也登場回は、作品終盤のクライマックスの展開に対応している。
つまり芹沢達也と藤本クンがここで交わす言葉にこそラーメン発見伝のスピリット全てがしっかりとパッケージングされているのだ。
2人の物語は、ここから始まる。
全話読み終わってからここを読むと色々と感じるものがあると思うので是非。

FullSizeRender
藤本クンのラーメンを食べて、芹沢サンが「!」となる展開はこれからも何度かありますが、記念すべき最初の「!」です


というわけでひとまず一巻全話レビュー完了。
iPhoneでのフリック入力なので非常に疲れました。
二巻以降はやるかもしれないし、やらないかもしれない。